国指定重要文化財 旧横浜船渠株式会社第一号船渠(ドック)

上空から見た第一号船渠(ドック)の様子

帆船日本丸が係留されている、旧横浜船渠株式会社第一号船渠は国指定重要文化財です。係留されている帆船日本丸も2017年9月15日国指定重要文化財となりました。

このドックは、横浜船渠会社が船の修繕用に建設したものです。1859(安政6)年の横浜開港後、貿易の拡大と入出港船舶の増加に伴い、本格的な港湾施設の建設が必要となっていました。港に必要な施設の一つとして船の修繕用ドックの建設が計画されました。イギリス人技師H.S.パーマーの計画に基づき海軍技師恒川柳作が設計・監督、1898(明治31)年12月に竣工しました。建設当初の長さは約168mでしたが、横浜港に入港する船舶の大型化にともない、1918(大正7)年にドックの渠頭部を内陸方向に延長し長さ約204mとなりました。幅は約39m、深さは約11mです。ドック建設には神奈川県真鶴産の小松石(安山岩)を使用しました。
このドックは、船が入ったら排水して修繕や検査などを行うドライ・ドックです。ドックの後方にある扉船を開けて船を入れ、扉船を閉めてドック内の海水を抜き、検査や船体の水面下部分の修理、外板・船底の清掃や塗装など船の手入れを行います。このドックでは、1899(明治32)年5月から1982(昭和57)年12月までの83年間に数千隻の船の修理を行いました。
横浜船渠会社は、1935(昭和10)年に三菱重工株式会社と合併し、三菱重工業横浜船渠(後、同横浜造船所)となりました。1983(昭和58)年同横浜造船所移転に伴い、このドック及びその周囲地は横浜市の所有となり、1985(昭和60)年からは日本丸メモリアルパーク内で帆船日本丸を係留するドックとして保存活用されています。
このドックは、建設当時最大規模を有した明治期の代表的ドライ・ドックの一つで、明治・大正期のドック築造技術を知る上で価値の高いものです。また、横浜港の歴史上でも重要な土木構造物です。2000(平成12)年12月4日に国の重要文化財に指定され、2007(平成19)年11月30日には経済産業省の近代化産業遺産に認定されました。
1世紀以上の歴史をもつこのドックは、いつでも見学可能です。干潮時には、壁面の石積みや渠頭部のレンガ積みの様子を一部見ることができます。ドックの周囲には、日本語によるドックや扉船の解説(一部英語表記あり)があります。(京浜臨海部産業観光認定事業)